初めての愛人

著者: 柳静香

本販売日:2002/11/10

電子版配信日:2013/09/20

本定価:576円(税込)

電子版定価:660円(税込)

ISBN:978-4-8296-6003-4

夢のようだ。そう、まさに夢のような光景だった。

羞じらいつつ目の前で気品あふれる裸身を晒すのは、

パソコン教室を営む麗しき美人講師・嵩村真夕子。

きっかけは講師と生徒、講義が終われば男と女……

時には熟れた身体を淑やかに包む和服を乱れさせ、

紘市の望むがまま爛れた肉交に溺れゆく「初めての愛人」

登場人物

まゆこ(37歳)講師

れい(24歳)部下

本編の一部を立読み

「家に、連絡しなくていいの?」

「遅くなるとは言ってある。でも……」

「大丈夫。私も泊まりはしないから」

その一言の後、紘市は真夕子を抱き寄せた。強く抱きしめる。

「あ」

小さく声が出た。真夕子がこれまで忘れていた、男の強い力だった。

「なんて匂いだ」

紘市も驚いていた。

うすうす感じてはいたが、真夕子の匂いがこれほどまでにかぐわしく、心を騒がせるものだったとは。香水もある。だがその芯に感じるのはまぎれもない、真夕子自身の身体から発散されている匂いだ。

いい女には、匂いがある。いい女は必ずいい匂いを持っている。酒井が言ったとおりだと思った。

「この匂いをもっと味わいたい。真夕子、きみを裸にして、隅々まで」

「まだ駄目よ。それにはまだ早いわ。お互いにシャワーを浴びましょう。それが礼儀ですもの」

紘市はシャワーよりも、今の真夕子の匂いを味わいたかった。しかしまだ最初の一度なのだ。急にすべてはかなえられない。

「清水さん、あなたが先に」

「そういうものか」

「ええ、女は男を待たせるものよ」

真夕子に従い、まず紘市がシャワーを浴びた。

バスローブを着てベッドでビールを飲んでいると、ようやく真夕子が現われた。

「すごい」

紘市は思わず子供のように呟いていた。

真夕子はバスタオルを素肌に巻いているだけだった。濡れないようにアップにした髪を解きほぐす。ウエーブのかかったセミロングの髪が、フワリと肩にかかった。

女神がいた。

紘市の目には、それは神話の女神を描いた裸婦像にも等しいものだった。海の泡から生まれた女神。それは美の女神、ヴィーナスだったか。

「真夕子」

紘市はたまらず抱きしめた。ベッドの上へ押し倒す。

「あっ!」

真夕子は小さく呻いたが、目を閉じてされるがままになっていた。紘市は自分のバスローブを脱ぎ去り、真夕子のバスタオルを剥ぎ取った。

眩いばかりの世界がそこにあった。

夢にまで見た真夕子の裸身。それを今、目の当たりにしている。手を伸ばせば届くところに真夕子のすべてあるのだ。

「思った以上だよ、真夕子。なんて綺麗なんだ」

妻の幸子にも言ったことのない言葉だ。そんな恥ずかしい言葉は、映画か小説のなかにしかないと思っていた。しかし、人は圧倒的な美を前にすると、てらいを捨てて素直になれるらしい。

「素晴らしいよ」

続きを読む

本の購入

定価:576円(税込)

以下の書店でもお買い求めいただけます

電子版の購入

定価:660円(税込)

以下の書店でもお買い求めいただけます

電子版の購入

定価:660円(税込)

以下の書店でもお買い求めいただけます

本の購入

定価:576円(税込)

以下の書店でもお買い求めいただけます