夢のようだ。そう、まさに夢のような光景だった。
羞じらいつつ目の前で気品あふれる裸身を晒すのは、
パソコン教室を営む麗しき美人講師・嵩村真夕子。
きっかけは講師と生徒、講義が終われば男と女……
時には熟れた身体を淑やかに包む和服を乱れさせ、
紘市の望むがまま爛れた肉交に溺れゆく「初めての愛人」
まゆこ(37歳)講師
れい(24歳)部下
本編の一部を立読み
「家に、連絡しなくていいの?」
「遅くなるとは言ってある。でも……」
「大丈夫。私も泊まりはしないから」
その一言の後、紘市は真夕子を抱き寄せた。強く抱きしめる。
「あ」
小さく声が出た。真夕子がこれまで忘れていた、男の強い力だった。
「なんて匂いだ」
紘市も驚いていた。
うすうす感じてはいたが、真夕子の匂いがこれほどまでにかぐわしく、心を騒がせるものだったとは。香水もある。だがその芯に感じるのはまぎれもない、真夕子自身の身体から発散されている匂いだ。
いい女には、匂いがある。いい女は必ずいい匂いを持っている。酒井が言ったとおりだと思った。
「この匂いをもっと味わいたい。真夕子、きみを裸にして、隅々まで」
「まだ駄目よ。それにはまだ早いわ。お互いにシャワーを浴びましょう。それが礼儀ですもの」
紘市はシャワーよりも、今の真夕子の匂いを味わいたかった。しかしまだ最初の一度なのだ。急にすべてはかなえられない。
「清水さん、あなたが先に」
「そういうものか」
「ええ、女は男を待たせるものよ」
真夕子に従い、まず紘市がシャワーを浴びた。
バスローブを着てベッドでビールを飲んでいると、ようやく真夕子が現われた。
「すごい」
紘市は思わず子供のように呟いていた。
真夕子はバスタオルを素肌に巻いているだけだった。濡れないようにアップにした髪を解きほぐす。ウエーブのかかったセミロングの髪が、フワリと肩にかかった。
女神がいた。
紘市の目には、それは神話の女神を描いた裸婦像にも等しいものだった。海の泡から生まれた女神。それは美の女神、ヴィーナスだったか。
「真夕子」
紘市はたまらず抱きしめた。ベッドの上へ押し倒す。
「あっ!」
真夕子は小さく呻いたが、目を閉じてされるがままになっていた。紘市は自分のバスローブを脱ぎ去り、真夕子のバスタオルを剥ぎ取った。
眩いばかりの世界がそこにあった。
夢にまで見た真夕子の裸身。それを今、目の当たりにしている。手を伸ばせば届くところに真夕子のすべてあるのだ。
「思った以上だよ、真夕子。なんて綺麗なんだ」
妻の幸子にも言ったことのない言葉だ。そんな恥ずかしい言葉は、映画か小説のなかにしかないと思っていた。しかし、人は圧倒的な美を前にすると、てらいを捨てて素直になれるらしい。
「素晴らしいよ」